キルケゴールの死に至る病という本のタイトルは死に至らない病の反転である。これは何を意味しているのか。冒頭に触れられているが、死に至らない病とはラザロ復活でキリストが語る次の言葉に由来する。キリストは病のラザロについて言う。「この病は死に至らず」。肉体的な死が終わりではなく再生あるいは復活であるということを表現している。キリスト教では肉体的な死はないと考える。つまり死に至る病は存在しない。しかし著者はキリスト教徒の立場から死に至る病というアンチデーぜを掲げる。このタイトルによって著者は肉体的な死に対して精神的な死を主題に設定している。著者は人間の精神的な死を絶望という語で表しその概念の定義を記述しようする。その目的は信仰の領域を描き出し定義すること。本全体の記述がこの命題に向かって組み立てられている。
キルケゴールはコリンウィルソンが書いたアウトサイダー問題を生きていた。キルケゴールは自身を「神の手による書き損ない」として意識していたらしい。そして書き損ないとして訂正されることに全存在をかけて反抗した。その反抗(強情)を絶望の度合いが高まったケースとして書いている。